扉をあけたら vol.6『私たちはきっと大丈夫』(七緒)



∴chimugusuiで植物療法を学ぶことで、なぜ人生まで大きく変容するのでしょう。
そんな問いを携えて、これまで4名の女性にお話を伺ってきました。
最終回となる今回は、私の『扉をあけたら』をお届けします。

写真と文:七緒(@naotadachi


 

自信の無さを埋めたくて、頑張りすぎていた


朝、鳥のさえずりで目を覚まして庭へ。春の訪れを待つ蕾にこころときめかせ、ハーブを収穫。
たわわに実った橙でジャムを仕込み、ビワの葉でハーブチンキ作り。
静かな山の麓で、写真を撮り、文を紡ぐ──。

鎌倉山の麓の「光と緑の家」で暮らしはじめて、2年が経とうとしています。

幼い子と暮らす毎日はドタバタ。
喘息の発作に慌てたり、取るにたらぬことで夫と喧嘩し、イライラを抑えられずため息をつく夜も。
でも今、こころの中心にあるのは安心感。「何が起きてもきっと大丈夫」という感覚が強くあります。

その深い安心感は∴chimugusuiに出会ってもたらされた大きなギフトです。

——-

∴chimugusuiとの出会いは6年前。
東京・代々木公園にアトリエを構え、がむしゃらに上を目指していた頃でした。
「もっと大きな仕事をしないと認めてもらえない」と、いつも誰かの評価を気にしながら、邁進していたことを懐かしく思います。

ひとりじゃ自信を持てない欠落感を、誰かに認めてもらうことで安心したかった。
評価されるとうれしくて、ドーパミンがどばどば出る一方、一体どこまで頑張れば自分にOKを出せるのだろう。30代半ば、ぽつぽつ夜道を歩きながら虚しさを感じるときもありました。

焦る気持ちにきゅっとブレーキをかけるように、コロナ禍が訪れました。
ぽっかり空いたスケジュールを目の前に、ふと「植物療法を学びたい」という気持ちがわきあがってきました。



そう思ったものの、当時はハーブや精油にふれることへの抵抗感がありました。交感神経を働かせて写真業界で上を目指す私と、静寂さを湛えた植物に惹かれる私。狭間でこころが揺れ動き、葛藤したのを今もよく覚えています。

でも、どうしても惹かれるのです。なぜか分からないけれど、いい予感がする。
頭の声はあれこれ不安を挙げてきましたが、直感を信じて∴chimugusuiの受講を決めました。
その扉をあけると、大きな変容がはじまることはまだ知らずにいました。

私たちのからだはパーフェクトなんだ

そうして2020年の秋、中級の「Body&Mind Class」から受講しはじめました。テキスト1ページ目に走り書きした言葉があり、∴chimugusuiのフィロソフィーが表れている気がします。

「私たちのからだはパーフェクト、滞りを整えれば自然と心地よくなる」

ものの見方が180度変わる言葉でした。だって欠けている穴を埋めたくて頑張ってきたから。
だけどからだはありのままでパーフェクト、それはつまりからだと共にある私もパーフェクトであるということ。安心感で胸の奥がじゅわじゅわしたのを覚えています。

講座に合わせてどっさり届く香り高いハーブと精油、呼吸が深くなる美しいデザイン、何より七重先生の「湧きあがった感情や感覚はすべてOK」という在りようにふれるたび、力が少しずつ抜けていきました。

全4回の講座が終わる頃、生理痛がぐっと楽になりました。

20年弱、鎮痛剤を何錠も飲んで、痛みをまぎらわせていました。時に外出先で倒れてしまうこともありましたが、そういう体質だから仕方ないと諦めていました。でも月桃やローズがブレンドされたハーブティーを飲み続けたら、翌月の生理痛が激減したのです。


「私にも整えることができるんだ」

目が覚めるような出来事でした。こころとからだに目を向け、セルフケアを重ね、不調がやわらいでいく。
花粉症、肩こり、肌荒れ、小さな不調に植物は驚くほど応えてくれましたし、自信を育むことにもつながりました。それは古くから脈々と受け継がれてきた、女性として、命としての自信。

講座では暮らしを助ける知恵をたくさん授けてもらい、今も助けられています。

そして、受講後から人生の変容が起きていきます。

直感を信じて導かれた、大きな変容

まず、あたらしい命を授かりました。「Body&Mind Class」受講直後に妊娠がわかったのです。

結婚から7年、子どもを持つことにずっと消極的でした。自分の時間を誰かに割くことが考えられませんでした。
けれど受講中に頑なだったこころが変化し、ふと「流れに身を委ねてみよう」と思えて。

出産を機に仕事のペースを落とす時期もありましたし、毎日は思うように進みません。けれど見える景色やご縁が広がり、私の可能性もぐんぐん押し広げられていることを実感しています。子どもの不調を手当てすることで、セルフケアの知恵も増え、最近は『天然生活』での連載やラジオ配信など生業にまでつながっています。

もう一つは鎌倉への移住です。




子どもが2歳の頃、上級の「Advanced Class」を受講しはじめました。
半年間、植物療法士としての実践を重ねる深い学びの場。

ですが、思うような成果は出せませんでした。余裕がなく欠席したり、ともに学ぶ受講生が順調に変化するさなか、もどかしくて涙する日もありました。
あの頃を思い出すと、ちょっとグレーがかっています。

でも一つ ── それが後々大きな変容につながるのですが ── はじめから願い続けていたことがありました。
それは「自然のある場所に引っ越したい」。もはや植物療法とは関係のないこと。だけど切実でした。

出産を経て、東京に閉塞感を抱きました。イヤフォンで耳を塞ぐのが当たり前になっていたけれど、生まれ育った神戸の山奥のように五感をひらいてのんびり暮らしたい。
でも家を探しはじめて1年半、ぜんぜん見つからず諦めかけていた頃でした。

そうして講座終了間際に見つけたのが、鎌倉山の麓にある古い一軒家です。内見で目の前に現れたのは、描いたイメージとぴったりの家でした。家と庭が地続きにあり、情緒を感じる佇まい。庭の真ん中には薬用植物・ビワの木が植わっていました。

 



仕事は大丈夫?息子は新しい環境になじめる?またしても頭の声はざわめきはじめます。
でもここでも最終的な決め手は“楽しそう”というシンプルな直感でした。

腹をくくって一歩踏み出せたのも「Advanced Class」で自分の内側を見つめ、前に進む大きな流れの中にいたからだと強く思います。

「小さな私」と「大きな自然」を信じて進もう




鎌倉山の麓に佇む「光と緑の家」に暮らしはじめたことで、本来の自分にどんどん還っていく実感があります。
一言で表すなら、生きやすくなりました。

やさしい人と手を取り合って仕事をする。春を待ち遠しく思う。
月光の下で読書に耽り、ぐっすり眠る。以前よりはるかにのんびり暮らしているのに、不思議とさまざまなことがスムーズに進みます。
必要以上に認められたい気持ちは、もうありません。

からだの声に耳を傾け、沈んでいた本心に出会い、直感を信じて動いたからこそ、本来の自分で生きられる場に導かれた気がします。
がむしゃらに頑張らなくとも心地よい方へ進む、と自分を信頼しています。

もちろんがむしゃらな日々も大切なプロセスでした。今も必要なときはえいやっと馬力を出すこともあります。

でも……承認欲求ではなく、ピュアな喜びから表現すること。
出し抜こうとするのではなく、自分も周りも心地よい選択肢を選べること。
そういう在り方で生きられることが、私自身とても楽で、幸せです。


また、庭とともに暮らすことで、私たちの自我を越えた、大いなる自然の流れがあることにも気付きました。

春・夏・秋・冬、どんなことがあっても四季は巡ります。
春になれば桜が咲き、秋になれば作物が実る。雨が降り、土が湿り、新芽がぴょこんと顔を出す。
自然のことはいつだって自然に行われていきます。

本来、私たちは大きな自然の一部。であれば、頭で考えすぎずとも、流れに身を任せれば大丈夫と思えるように。
忙しくてつい忘れてしまうときもあるけれど、思い出す度にこころの奥が安堵で満ちていきます。

この先、うまくいかないことは起きるでしょう。
けれど植物療法の心強い知恵もあるし、不調は心地よい人生へ向かう道しるべであることを知っています。

私たちのからだはいつだってパーフェクト。
そして自然はいつでも心地よい方へと向かおうとしています。
「小さな私」と「大いなる自然」を信じて進んでいけば、きっと大丈夫。安心感が今の私を包んでいます。


本来の自分に出会う、幸せの扉

 

∴chimugusuiで植物療法を学ぶことでなぜ人生まで変容するのでしょう。

そんな問いを携えて4名の生徒さんを訪ねてきました。
それぞれ不調の改善に加えて、本来の自分に還るための変容が起きていました。
こころの変化、住まいの変化、仕事の変化……。

「変容はみなさんの内側にある力が起こしているの。
からだの声を聴き、安心できる場で流れに身を任せ、ハーブや精油を活かして自然と繋がる。
この3つが重なるときに、自然に自分らしい人生へ向かう道筋ができる。
∴chimugusuiはそのナビゲートをしている感覚です」

そう七重さんは話します。

∴chimugusuiで学びを深め、植物の力を借りてセルフケアをすると、打ち捨てられていた本心が泉のように湧き出てくることがあります。
そして本心に導かれるままに踏み出すと、それぞれの命が輝く場所へ進んでいく。
結果、大きな変容が起きる。

そのプロセスは社会の中で一般的とされている、目標達成に向けて奮い立たせる在り方とはちょっぴり違います。

大丈夫。必要以上に成果を追い求めずとも、本心とつながることでその人らしい人生へスムーズに向かっていける。それはこの取材で繰り返し感じたことです。

私たちは何のために生まれてくるのか──。

それは本来の自分として生きるためなのかな、と今は思っています。
本来の自分であるとき、満ち足りた気持ちでひたひたになります。
無垢の喜びは、自然と分かち合いたくなるもの。わたしから社会、社会から世界へと、幸せの輪は同心円状に広がっていきます。

本来の自分に出会うきっかけをくれる∴chimugusuiは、幸せへの扉かもしれません。

今日も山の麓には星が瞬き、静かな夜空をそれぞれの色で彩ります。私たちの光はみんなの光となり、しんしんと世界を光らせていく。そんなことが今、あちこちで起ころうとしています。

 



●プロフィール
七緒

写真と文にまつわる表現をしている。対話と写真で自分らしさを紐解く「It’s me!」のほか、天然生活「鎌倉山からのセルフケア便り」やラジオ「セルフケアジャーニー」も好評。

Instagram:@naotadachi

今までの連載はこちら