扉をあけたらvol.2『私のまんなか、見つけた』(脇もとこ)
∴chimugusuiに出会ったことで、人生の変容を体験した生徒さんが多くいます。
vol.2は「この場所で自分のまんなかを見つけた」と話す、脇もとこさんが登場。
写真と文/七緒(@naotadachi)
薬に頼らずとも、食で体は整えられる
ユーカリ、いちじく、月桃──。木々が葉をのびやかに茂らせる、十字路の角に佇む一軒家。白の階段を上がり扉をあけると、愛犬フォンドがぬいぐるみをくわえて出迎えてくれました。
「実は軽い気持ちで∴chimugusuiを受講しはじめたんです。人生が変わるなんて思ってもみなくて」
そうチャーミングに微笑む脇もとこさんは、スタイリストとして活躍しながら、参鶏湯研究家・漢方植物療法士としても活動。「HOME KITCHEN PHARMACY」というモットーを掲げて、身近な食材で体調を整えるワークショップを手がけています。
キャリアのはじまりは大手広告代理店のスタイリストから。広告業界が華やかで勢いのあったあの頃。コンセプトに合わせてアイテムを選び、シーンを作り込んでいく。服、車、シャンプー、ときに蛍まで。
「今も昔も面白くて大切な仕事です。ジャンルレスに関われるし、どんな依頼にもガッツで乗り切る感じも合っています。結婚を機に独立し、20代から30代にかけては、アポ取り、営業、撮影と、目まぐるしく突き進む日々でした」
当時は「小さな不調があっても見て見ぬふりをしていた。自分を整える術を薬以外で知らなかったから」と、もとこさん。
大きな転機となったのが、2011年に友人宅で娘と味わった薬膳料理・参鶏湯。おいしさのあまり、家でも振る舞いはじめた所、食べた人がみるみる元気を取り戻すさまに驚いたのだとか。
「参鶏湯を食べると、疲れていた人も肌艶良くなるんです(笑)子どもから年配の方まで喜んで、調理はシンプル。なんてポテンシャルのある料理!と魅せられました。レシピを教えてほしいと頼まれ、翌年からワークショップを開催。その後、本格的に突き詰めたく、薬膳料理の大元・漢方を学びはじめました」
ときを同じくして、体調不良に見舞われましたが、脈診で勧められた黒酢を飲んだその日に、治癒へ向かっていきました。身近な食材で不調は治せる。リアルな実感が、薬に頼りすぎないセルフケアへの関心へつながっていきます。
「漢方の勉強はめちゃめちゃ楽しくて、どっぷりハマりましたね。季節や体質にあわせた養生法を提案し、目の前の人が健やかに変化していく。それがとにかくうれしかった」
視界がひらけた∴chimugusuiの学び
漢方を学んで3年が経った頃。もとこさんは∴chimugusuiの扉をひらきます。
「Instagramの世界観に惹かれて、ずっと気になっていました。とはいえハーブティーもそこまで好きじゃなかったし、あの美しさをオンラインでどう表現するか興味があったのが正直な所。ところが人生を変える深い気づきが待っていました」
まず印象的だったのは、講座ごとにどっさり届くハーブと精油。箱を開けた瞬間、漂う澄んだ香りに、心身がほどけていくのを感じたそう。そして初級のBasicから順に学ぶ中で、もたされたものは…?
「知識はもちろんですが、本質的なものを学ばせてもらいました。Advance受講中だったかな…犬の散歩をしていたら、突然『すべてはつながっている』と腑に落ちたんです。自分というからだは、大いなる自然の一部だと本当に実感できて…。視界がぱあっとひらけて、生きている世界が変わりました」
道端に佇む植物と、この人生を生きる私。どこか切り離されているようにも感じるけれど、本当は同じ日の光を浴び、水を巡らせる仲間。鳥も虫も動物だって、地球の多様な生命は美しい調和の中でつながりあっている。
その気付きの先に生まれたのは、もとこさんをやわらかく包む安堵感でした。
「説明が難しいのですが…こころの奥があたたかなもので満ちていきました。すると散歩してるだけで、もうしあわせ。今まで絶対しなかったのに、街路樹に話しかけたくなったり、雨上がりの植物を見て微笑んじゃったり」
取り巻く環境は変わらなくても、まなざしが変わると、世界は変わる。なぜなら私たちは自らの視点を通じて、この世界を捉えているから。
「不思議に感じる人もいるかもしれません。でも本来、誰もが持っている感覚だと思う。気づかぬうちに忘れてしまった自然とのつながりを思い出した。それが∴chimugusuiを受講した一番のギフトでした」
身近な植物で健やかに変化するなんて!
∴chimugusuiの植物療法スクールは、Basic、Body & Mindと学んだ先に、Advanceがあります。そこでは専門知識に加え、クライアントの心身と向き合い、ハーブや精油、ライフスタイルをカウンセラーとして提案。植物療法士としての実践を積み重ねる場でもあります。
Advance受講中、代表の七重さんも驚くほど何人ものクライアントを抱え、カウンセリングに励んだもとこさん。漢方と植物療法の学びが混ざり合い、自身も他者も心地よく変化していく。それが楽しくて、楽しくて。
「ミントやネトルのハーブティーで胃腸の不快感がなくなるなど、私自身も大きな変化がありました。加えてケアを重ねるとどんな人も表情がゆるみ、心身が整っていく。それが薬ではなく、スーパーなどで手に入る植物で起きるなんて、ただただ感動的でした」
「また、薬剤師の国家資格がないと処方できない医療用漢方と異なり、ハーブや精油は調合し、お渡しできます。直接はたらきかけて、健やかに変わっていく。それは参鶏湯を振る舞いはじめた頃の幸福感ともつながっています」
「調子のすぐれない人を見ると何かしてあげたくなる。もう、そういう性分」と笑いますが、立ち上げから関わるオンラインコミュニティ『forest syn』のファシリテーターも、その延長線。
「Advance修了後も∴chimugusuiの世界観にふれたくて『お手伝いします!』って手を挙げました。この場でみなさんの変化にふれるのは喜び。私にとってもこころの拠りどころです」
調和の中に在るから、もう大丈夫
参鶏湯との出会いを機に、漢方、そして植物療法。心赴くまま学びを深めた13年。そして「∴chimugusuiでまんなかを見つけた」と話します。
「迷わなくなりました。ハーブや精油といったセルフケアの術が増えたことで、どんなときも自分を整えられる信頼感がありますし、自然とのつながりを実感できて、深い安心でいつも満たされています。美しい調和の中に在るから…もう大丈夫」
もとこさんの変容は、特別な人だから起きたことではありません。扉をあけたら、目の前に広がっていた安心できる世界。今、その変容が、全国の生徒さんに次々と起きています。
「∴chimugusuiだから、人生を変える大きな気付きに出会えました。あの時、Instagramに惹かれた直感を信じてよかった」
アイテムをスタイリングし、1枚の写真におさめる。参鶏湯を囲み、朗らかなときを分かちあう。植物を調合し、健やかな方へ導く。もとこさんは、きっと美しく整える人。その美意識と∴chimugusuiの世界観が、共鳴したのでしょう。
「だって美しいことは健やかだから」
取材に同席していた代表の七重さんと、もとこさんは、そう言って顔を見合わせました。
それは美醜ではなく、在り方の話。「美も医も同じところから発している」とは医師・稲葉俊郎さんの言葉ですが、美しさと健やかさは「心地よさ」という深い水脈でつながっている。
これからも、もとこさんは「美しく健やかになりますように」とおまじないのように唱えながら、前に進んでいく。美意識とガッツを携えながら。
●プロフィール
脇もとこ
スタイリストとして広告などを手がけるほか、参鶏湯研究家、漢方植物療法士としても活躍。∴chimugusuiは2020年〜2022年に受講。∴chimugusiのオンラインコミュニティ『forest syn』の運営にも携わっている。
Instagram:@motokowaki
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