
扉をあけたらvol.4『調和した私で生きる』(稲垣沙織)
「人の目ばかり気にしていた」という稲垣沙織さん。受講を機に本来の自分を取り戻し、職場や生き方まで変容した体験談を伺いました。
写真と文:七緒(@naotadachi)
不思議と惹かれた一冊の本
木漏れ日が降り注ぎ、風と呼応しゆらめくモチーフ。ハーブ瓶が並ぶ空間に、柿渋で丁寧に塗り染めた床。自然美に満ちたこの場所で、受講生の稲垣沙織さんはセルフケアサロン「結ふ」を開いています。
「セルフケアを重ねることで、外見の美しさも整っていく。まつ毛・眉毛のデザイン、植物療法を組み合わせて、本来の自分を大切にできるケアを提案しています」
幼い頃から、人一倍美容に興味があった沙織さん。鏡の前で何度もくせ毛のブローを試したり、ファッション誌を眺めてヘアメイクの仕事に憧れたり。
ジャンルは変わりながらも、美しさをまなざして生きてきたと話します。
「両親の影響もあり、昔からファッションやメイクが大好き。卒業後は東京で美容師として働いた後、留学を経て大阪へ。ネイリスト、アイサロンの立ち上げなど美容に関わって歩んできました」
七重さんの著書『ゆるめる・温める・巡らせる』に出会ったのは、エネルギーをほとばしらせながらサロンワークに邁進している真っ只中。本屋でたまたま手に取ったことがきっかけでした。
「もともと植物療法に興味があったわけじゃないけど、不思議と直感が働きました。わけもなくイライラしたり、人の目を気にしてありのまま生きられないもどかしさを抱えていたので、ヒントが見つかる予感がしたのかな」
持ち前の好奇心がわきあがり、すぐさま受講を決めた沙織さん。他の植物療法スクールと比較もしましたが、∴chimugusuiを選んだ決め手は美しさ。
「ウェブサイトの空気感やお写真がとても素敵で。何を得られるかは実際に学ばないとわからないと思ったため、最終的には感覚で選びました」
感覚を信じたら安堵に出会えた
そうして初級のBasic Class、中級のBody & Mind Classと学びを深めていきますが、はじめの頃は「グループコンサルテーションでも周りに合わせて話している節があった」と話します。
転機になったのは上級のAdvanced Class。Advancedは自分とクライアントのからだの声に耳を傾けながら、半年かけてハーブ・精油のブレンド、カウンセリングを行うケーススタディの場。
沙織さんも日々カウンセリングに励んでいましたが、効果がいまいち実感できません。でも七重さんの「クライアントさんの心地よさを聞いてる?」という一言で、視点がガラリと変わりました。
「ハッとしたのを今でも覚えています。当時の私はセルフケアを“どのくらいできたか”というタスクで見ていました。でもセルフケアは感じることが軸なのか!って」
普通、学びを深める際、その深度は点数や達成度で図ることがほとんど。でも∴chimugusuiで大切にしているのは、正誤も優劣もない、ともすれば曖昧に思える”からだの感覚”。
なぜなら感覚をたよりにすることで、快・不快などの内に秘めている本当の声にたどり着き「どうすれば心身ともに心地よい方へ変化していくか」が自ずと分かるから。
七重さんはこう語ります。
「私たちは社会で求められる役割を全うするため、時に内側の本音に気づかないように…まるでなかったかのように振る舞います。取るに足らないものだとでもいうように」
「でも本当は本音を受け止め、大切にすることが、私たちを幸せの方向へ導いてくれる。それは自然の摂理。だから、からだの声を聴くことは心身を健やかにすることに加え”本質としてのわたし”を生きることへつながるんです」
∴chimugusuiの深淵に気づきはじめた沙織さんは、講座最終日、こころの奥にずっと潜んでいた魂にふれ、大きな感動を体感。涙があふれて止まらない沙織さんに、七重さんはやさしく声をかけました。
「内側に眠っていた感情がやっと解放されるとき、涙があふれるの。沙織さんの魂がこのタイミングなら大丈夫と思ったから、治癒のちからが発動しているんだと思う。だから本を見つけてここにたどり着いたのは偶然じゃなく、沙織さん自らが選んだこと」
「七重先生の言葉を聞いたとき、今までの人生丸ごと愛せた気がして、こころがあたたかなもので満ちていきました」
仕事も人生も調和へ向かう
なぜ、沙織さんはそう思えたのでしょう。
「それまでは人の目ばかり気にしていたから、本当の気持ちとチグハグで生きづらかった。でも植物の力を借りて、内側に目を向けて訪れた安堵は、私の魂に導かれて起きたこと。必要なことは必要なときに起きるから自分を信じていいと気づけて、霧が晴れるように楽になったんです」
からだの感覚に意識を向けたことで、眠っていた本来の自分が呼び覚まされ、自然治癒力がみなぎっていく。それは∴chimugusuiだから起きたことだったと話します。
「七重先生だから委ねて大丈夫と思えましたし、回を重ねるごとに自分らしさを発露する生徒さんの存在も心強かった。みんなで響き合って最終日の感動に繋がりました」
受講を経て、自分への信頼を取り戻した沙織さんは、ここからどんどん扉をあけていきます。
Advance Class終了間近に、水辺の美しい空間と出会い、2023年にセルフケアサロン「結ふ」をオープン。アイリスト兼植物療法士という彼女らしさが光る肩書で走りはじめました。
「前のサロンに在籍していた頃から物件を探していましたが、1年間なかなか見つからなくて。植物療法を学び終えるタイミングだから出会えたと確信しています」
「結ふ」で力を注ぎたいこと。それは美容と植物療法を結ぶこと。まつ毛・眉毛のケアに加え、体調に合わせてハーブを調合。暮らしに寄り添いながら、内側から美しく生きるお手伝いを。
「まつ毛・眉毛は健康という土台が整った上で、美しくなるもの。寝不足だとまつげが抜けてしまうこともあるんです。私が経験したように、からだの内側の感覚に耳を澄ませて、植物とともに健やかになる…その力添えができたらうれしい」
今も未来も過去も、愛せるように
沙織さんは今、自分を抑えることも、他人を意識しすぎることもなく、フラットに自分自身として生きているように感じます。ゆらぎも受け止めながら、しなやかにまっすぐに。
「実は学ぶ前は怒ってばかりいました。意見の違う人に苛立ったり、時に感情をおさえきれず泣くことも。今も気分のゆらぎはあります。でも周りと比較して落ち込むことも、感情に振り回されることも少なくなりました。人は人、自分は自分だから」
自分という一本の幹があれば、どんな風が吹いても私はわたし。誰かと比べる必然性が自然と薄れていく。
加えて、個を超えた大きな自然の流れを信頼し進むと、必要な場所にたどり着く──。
「物件との出会い、独立、怒りの手放し…自然の流れを信頼して進んだら、いろんなことがするする叶いました。受講後、∴chimugusuiの気付きが現実と繋がりあい、さらに自己肯定できるようになり、息苦しかった過去まで受け入れられるようになっています」
一歩一歩進んできた道のりを愛せるなら、この先の未来も大丈夫と信じられるでしょう。それは長い人生において、ハーブや精油の知識にとどまらない大きなギフト。
「だから私にとって∴chimugusuiはいのちの学校」
沙織さんはまぶしい笑顔で微笑みました。
⚫︎︎プロフィール
稲垣沙織
セルフケアサロン「結ふ」オーナー。美容と植物療法を組み合わせることで、本来の自分として美しく生きるためのお手伝いをしている。
Instagram:@_saoriinagaki
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